イエローナイフ旅行記

オーロラを見にカナダ・イエローナイフへ行ったので旅行記を書いておく。

 (ここに書かれている情報は2023年1月当時のものであるということに留意してください。)

 

 いろいろあって去年12月末をもって退職することになり、1月がまるまる有給休暇消化期間となった。こんなに長い休みは人生においてしばらくないだろう。せっかくなので遠いところに旅行に行こうと思った。海外に行ったことがないので海外旅行をしようと考えた。何を見たいかを考えて、まず「オーロラが見たい」と思った。大学生の時に後輩が行った話を聞いていて自分もいつか見てみたいと思っていたからだ。

 初めての海外旅行だから航空券やホテルをいちから自分自身で準備するのは難しい。無難にパッケージツアーにしておこう。インターネットで”オーロラツアー”と打って調べた結果、旅行地にはヨーロッパ方面と北アメリカ方面があるようだ。

www.jtb.co.jp

 

 仕事で英語を少し使っていたので、自分の英会話能力が実際どこまで歯が立つか試したくて、英語圏である北アメリカ方面に行くことにした。予約の埋まり具合や値段から、イエローナイフ5日間を予約した。料金は大体40万円くらい。

旅行の準備

 パッケージツアーを申し込んだが旅行代理店に直接訪れることはなかった。旅行代理店とのやり取りはすべてJTB会員マイページのメッセージで行った。

尋ねられたのは以下の2つ。

  • 新型コロナウィルス3回接種済証明書を持参できるか
  • 現地でレンタルする防寒着のサイズ

カナダへのビザ代わりとなるeTAも忘れずに申し込む。料金は7カナダドル。2022年10-11月は1ドル150円にタッチするほどの歴史的円安だったので、少し待ってから申し込んだ(ドルはドルでもアメリカドルとカナダドルは異なるものだが、レートは連動していないこともない)。旅行に行く1月にまた円安にならないことを祈った。

www.canada.ca

 

eTA申請ガイド(日本語版)

https://www.canada.ca/content/dam/ircc/migration/ircc/english/pdf/eta/japanese.pdf

 

 以前は、カナダ入国の際には"ArriveCan"を使って登録を行う手続きがあったらしいが、2022年10月1日以降は必要なくなったらしい。

 念のため、「たびレジ」も登録しておく。

www.ezairyu.mofa.go.jp

 

 旅行保険については、クレジットカード付帯のもので済ますことにした。問い合わせ先などがわかるように書類をプリントアウトして持って行った。

 ネットについては、使っているキャリア(楽天モバイル)だと海外ローミングで2GB使えることが分かったので、普段のスマホをそのまま持っていくことにした。WiFiルータも持って行かなかった。

 旅行先であるイエローナイフでは、冬は-30℃にまでなるということだったので衣服などを購入した。

 

持ち物

  • 厚手の靴下x3
  • 厚手のインナーシャツx2(綿)
  • 薄手のヒートテックx2(重ね着して厚手1枚とみなした。ほかのサイトだとヒートテックは肌が荒れるからダメと書いてあったが、肌が弱くなければヒートテックでも全然いいと思う)
  • 厚手のレギンスx3
  • 厚手の靴下x4
  • 耳当て
  • ネックピロー
  • 薄手の手袋(はめながらスマホを操作できるやつ)
  • ネックウォーマー
  • 下着x5
  • ニット帽子(防寒着のフード+耳当てで充分なので使わなかった)
  • カイロ(貼らないタイプ)x10
  • スマホの保温ケース(Thermopoc)
  • 読書用の本
  • 腕時計
  • クレジットカード
  • パスポート
  • コロナウィルスワクチン3回接種済証明書
  • スマホ用三脚(これは結局使わなかった)
  • マスク5枚くらい
  • スマホ充電器
  • モバイルバッテリー
  • 筆記用具

 アイマスクや耳栓は「一回きりの旅行のために買うのもなあ。困ったら現地でも買えるし」と思って買わなかった。結局買わなくてもどうにかなった。変換プラグは必要ない、なぜならカナダは日本と同じ規格だからである。電圧は異なり110Vであるため、充電器が対応しているかどうかは見ておく必要がある。

 荷物はキャリーケース1個とリュックサック1個に収めた。

 成田空港に着く時間から逆算して家を出る予定を決めて、当日を待つ。

 

1日目(2023/1/18)

 1週間前くらいから生活リズムが完全に狂っていて、寝れずにいた。

 12:58東京駅到着。成田空港行のエアポートバスに乗ろうと思い八重洲南口の高速バス乗り場に行ったが、係員の方曰く「事故渋滞で1時間遅れる可能性がある」とのこと。東京駅ー成田空港は通常90分間。これが150分間になれば15時半に着く、もっと遅れるかも。18時成田発の便に乗るので、16時には空港についていなければならない。無用なリスクはとるべきでない。バスをやめ電車に切り替える。Googlemapに導かれるままに日本橋駅まで少し歩き浅草線に乗る。途中京成本線に入る。京成高砂駅スカイラインに乗り換え。成田って遠いんだなあ。
 14:30くらいに成田空港駅に到着。まず空腹を満たすためにサブウェイでエビアボカドを食す。時間があるのでぶらぶら探索。スーツケース用の鍵とサングラスを買おうか悩んだがやめておく。
 暇つぶしに展望デッキに出て、飛行機が飛び立つ様子を眺める。酒を飲みながら飛行機を見ている若い女性がいて「ああこの人は玄人だな」と思った。飛行機が助走をつけて離陸していく。月並みな感想だがあの薄い翼で鉄の巨大な物体がよく空を飛べるものだ。
 16時ちょい前になったので、JTBカウンターへ向かう。受付の方から用紙をもらい説明を受ける。もう一人同じコースの人がいるがだいぶ前に来てもう行ってしまったとのこと。イエローナイフでどの人かわかるだろう。申込人数が2人だけということをここで初めて知る。ツアーの予約もかなり埋まっていたし、もっと人数がいるものかと考えていた。コロナの影響で規模縮小しているのだろうか。
 Aカウンターに行き、教えてもらいながらチェックインし、Dカウンタでキャリーケースを預けた。ここで、マイレージの申し込みを忘れていたことにはあとで気づく。
 飛行機を眼前に見ながら、ペットボトルのお茶を飲み切る。いよいよ初めて海外に行くんだなという気持ちになってくる。

 

成田空港第1ターミナルにて


 ゲートにパスポートをかざして顔写真を撮って入る。その後荷物検査。自分の荷物が再検査のレーンに入っていってドキッとしたが何事もなく返却された。
 3階へ降りて出国ゲートを抜ける。免税店が軒を並べている。Akibaharaを全面に押し出したショップもあった。搭乗する44番ゲートは端っこにあった。ゲートの位置を確認して逆走しショップを見て回る。また来ることしばらく無いのだろうから。連絡通路は長いトンネルのようだった。

成田空港第1ターミナルの連絡通路

 17:15ころに44番ゲートに戻ると、列ができていた。"Zone4"とはなにかを調べようと思ったがwifiLTEも繋がらない。少し焦る。再起動したら治った。"Zone"は搭乗の優先順位のことらしい。列に並んで待つ。
 テレビでは大相撲初場所がやっている。案外海外の人はここで日本のイメージを醸成しているのかもしれない。
 列が少しずつ進んでいく。登場口にいる男性係員がパスポートと実際の顔を確認する。「ハロー」と言っているが日本語パスポートを見ると「こんにちは」に切り替わった。
 席は23H。右舷の通路側。真ん中は南米系の男性。窓側はインド系の女性だった。
 フライト時間は約8時間。日本時間18時から深夜2時まで。

 離陸はかなりあっけなかった。いつ離陸したかもわからないくらい。沖縄にフライトしたときはもっと感じるGがあったような、なかったような。
 英語アナウンスは早口で全く聞き取れない。ネイティブになるにはまだまだ程遠い。自分の英語力がまだまだであることを痛感する。英語アナウンスのあとに流れる日本語アナウンスのありがたさ。

 wifiが入らないのですごく暇。座席の画面で映画を見る。映画”Nope”に挑んだが英語字幕しかなく挫折。"アダムスファミリー"が日本語吹き替えがあったのでそれを流す。
夕食のワゴンが来る。チキン&パスタもしくはビーフ&ライス。
 "chicken please."と初英語。pleaseの発音がrになってしまった気がする。日本製のチョコパン?がついてきた。パンは食べ切れないのでキープした。
 夕食が片付けられると飛行機の中が暗くなる。
 リラックスするために座席の画面でカナダの音楽をかける。音量調整の仕方がわからず鳥の鳴き声がうるさい。結局イヤホンは外してしまった。
 寝ようとするのだが、座りながら寝るという行為は人類の設計の中には入っていない。体が上手く収まらなくてとても辛い。深夜バスとおなじだが時間はこちらの方が長い。隣の男性にあぐらをかくとよいことを教えてもらう。
 ネックピローは今回買ってよかったものの1つだ。顎を置けるというのはありがたい。フードがついていてそれで遮光もできるのも良かった。斜め左前の日本人男性がずっとスマホでアニメを見ていたから(日本語字幕であることはわかった)。

 日本時間の深夜1時頃、朝食が配られる。エッグもしくはヌードル。ヌードルを食べる。焼きうどんのような感じで日本人の味覚に合って美味しかった。隣の男性は”ベジ?(おそらくベジタブルの略)”と聞いていたので、宗教的なあれがあるのかもしれない。
 窓側の女性はずっと"special food"を頼んでいた。こちらもハラールとかベジタリアン料理とかなのかもしれない。この女性はずっと寝ていた。よほど疲れていたのかもしれない。

 パイロットのアナウンスが聞こえてくる。バンクーバー時間9:05AM(日本時間2:05AM)に着陸とのこと。高度が下がっていく様子は座席画面のフライト情報からリアルタイムで見られた。腕時計の時間をカナダ時間に合わせた。途中、乱気流で機体が揺れた。高度3000 feetくらいまでは窓の外には雲しか見えなかったが、着陸5分前になるとバンクーバーとその周りの景色が見えてくる。フィヨルドのような、島が点在する地形。古い陸海を長い年月をかけて水が浸食した名残だ。人の住めるところはほんとうに河口付近にしかない感じだ。

 飛行機を降りる。バンクーバーは7℃でそれほど寒くない。ただしイエローナイフは-11℃であり覚悟が必要だ。やはり海岸沿いと内陸では気候が違う。

 日付変更線を西から東に越えたため1月18日の朝がもう一度始まる。延長戦。
 国内線乗換のためCanada connectionの案内の方に進む。ネットで予習したのとはだいぶ違っている。イエローナイフ行きのチケットを紛失してしまったため再発行してもらった。機械に入力し入国審査を受ける。1問理解できなかったのが悔しい。
 手荷物検査ではカイロ10枚のうち7枚まではOKとなり残り3枚が没収された。なんだそれ。
 国内線ターミナルに入る。搭乗口のC29ゲートはすぐに見つかった。海外ローミングをONにしてネットにつなげる。
 今は10時、イエローナイフ便は17時。ひたすら待つ。本当はまっすぐ乗り換えするのではなく一回外に出て、バンクーバー空港のターミナル以外の場所も散歩してみたかったが、変なことして再入場できなくなっても嫌なので大人しく待つことにする。
 それにしても、イエローナイフの便は1日に1便しか出ていないのだろうか。仮にも準州の州都であるのにも関わらず。
 カナダはクレジット文化が進んでいると前情報で聞いていたが本当にその通りだった。現金が使えない自販機もあった。両替をするかどうか非常に迷う。自動両替機は20$の倍数しか引き出せないという謎仕様であった。最後まで両替をしなかったが旅行中特段困ることはなかった。
 機内でまともな睡眠が取れていないので眠くなる。これも時差ボケに含まれるのだろうか。これは単なる睡眠不足だ。

 時間があるので、C29ゲートの待合所で柞刈湯葉「まず牛を球とします」を読み切った。
 読書中ふと顔を上げるとカラスが歩き回っていた。空港職員らしき人も休憩していたが意に介していない。ちょっとしたカルチャーショックのようなものを感じた。自然豊かなのはいいことだが、椅子の背もたれにフンが付いていたのは、ちょっといただけない。

バンクーバー空港のカラス


 座りっぱなしなのもあれなので、ターミナルの中をぶらつく。ショップで英語で対面オーダーするのは怖くてできない。陰キャ言語学習に不利だ。
 ゲートABに向かう通路には飛行機の模型とディズニーのフィギュアが並んでいた。誰かの寄贈かな?

 空腹を満たすため、売店クランベリーのドリンクとfreshiiのサンド?を買う。カナダ初買い物である。

 17時頃イエローナイフ便。小型の機体。寝ていたので特筆すべきことはない。所要時間3時間くらい。

 イエローナイフ空港着。日はくれて夜。一面の曇り空であった。外は思ったより寒くない。空港に入ると大きな白熊が目に入る。赤い服を着た日本人ガイドの方が出迎えてくれた。客は自分を含めて5人ほど。ほかの旅行代理店から申し込んだ人と一緒になっているようだ。

イエローナイフ空港


 コンベアを流れてきた荷物を受け取って、バスに乗ってホテルへ。

 ホテルへ向かう途中でキツネを見かける。イエローナイフでは、野良猫ではなく野良狐を街中でちょくちょく見ることになる。街の誰かが餌付けしているという噂もあるようだ。

 Nova innはダウンタウンのやや端っこにあるホテルである。ホテルで防寒着を受け取る。部屋は207号室。ガイドの男性は山梨出身らしい。

 カナダのホテルの一般的なルールかどうかはわからないが、最初にクレジットカードで250$預けておき、部屋に損害があればそこから賠償費用が引き落とされるらしい。大体損害を出すことはないので250$は使われることなくそのまま返ってくる。

 ホテルの部屋はWiFi電波が飛んでいたが、PINコードが分からなかった。なくてもなんとかなったのでWiFiは使わなかった。

 

 防寒着は5点セット;

  • 防寒ジャケット
  • 防寒ズボン
  • 防寒ブーツ
  • 防寒グローブ
  • 目出し帽

防寒ジャケット。カナダグースであり、これを着ているだけで寒くない。

防寒ズボン

防寒ブーツ。汗で不衛生にならないよう寝る前に中敷きを外して干しておく。

目出し帽

(防寒グローブは写真撮り忘れた)

 23時前にオーロラビレッジ行きのバスが迎えに来る。30分ほどかけてオーロラビレッジへ。オーロラビレッジは山の中にある。街の明かりがない分、空が良く見える。
 バスの中でガイドの案内を聞く。先ほどのガイドとは別の方だ。
 ガイドさん曰く、オーロラを見られる条件は3つ;

  • 北緯60度以上であること
  • 夜であること
  • 晴天であること

今日のような曇り空ではかなり難しいとのこと。本来イエローナイフは晴天がほとんどだが、この冬は異常気象で暖冬になっているせいで水蒸気が多くなり曇りが多いのだそう。雲の隙間からもしかしたら見ることができるかもしれない。雲の隙間を探すには星を探すことをおすすめされた。また、イエローナイフは雲の流れが速いのでチャンスはあるとのこと。

 オーロラビレッジに到着。2:20までが鑑賞時間。

 使用にあたっての注意事項を聞く。

 ティーピーと呼ばれる先住民の建物がいくつかあって、中には薪ストーブがあり暖を取ることができる。温かい飲み物もある。ただし、飲み物をティーピーの外に持ちだしてはいけない。野生動物が寄ってくる危険があるため。この日は7番と9番のティーピーが使えた。休憩は30分に1回くらいが推奨。
 オーロラビレッジにはいくつか周りを見渡せる丘がある。一番人気はBuffalo hillである。オーロラが出やすいといわれる北の空を遮るものなく見渡せる。他にもRaven hill, Moose hillなど動物の名前がついた丘がある。
 ティーピーは湖に面したところにあるが冬は凍っており地上と同様になっている。湖上でオーロラを見ることも可能である。
 ダイニングホールと呼ばれる建物が本部のようになっており集合場所はここである。水洗のトイレもある。キーホルダーや、ポストカードなどお土産を買えるが、それほど充実しているわけではない、10$以上でないとクレカ支払いができない。
 丘の上やティーピーの周りには貸し出し椅子が用意されている。使った後は元の場所に返す。

 

オーロラビレッジのティーピー

 この日はずっと曇っていて、オーロラは見られなかった。

 ダイニングロビーはアジア人が多いように見えた。オーロラビレッジは前社長が日本人だったこともあって当初は中国、韓国、日本などアジアからの観光客が多かったそうだ。ただ、コロナによる渡航制限を受けて今はオーストラリアやアメリカからオーロラを見に来る観光客が割合として増えているらしい。東アジアやオセアニアから見て、オーロラが見える場所として一番近いのは北米大陸の太平洋側になるだろう。ロシアでも見られるかもしれないが、時世的に望めない話である。
 バスに乗ってホテルへ戻る。お風呂へ入り(ドライヤーの使い方がわからない)飛行機でもらったパンを食べる。ドアノブにはDo not disturbをかけておく。防寒シューズの中敷きを干す。就寝。
 長い1日であった。

2日目(2023/1/19)


 11時頃に起床。

 前もって申し込んでおいた市内観光ツアーに参加。バスで迎えに来てもらう。

www.veltra.com


 中国人の家族と覚わしき参加者が3組ほど。韓国人が1人、日本人(自分)が1人であった。ガイドは英語と中国語で説明していた。
 はじめにイエローナイフの石碑と飛行機モニュメントを見る。ガイドさんにphoto?と聞かれたので撮影してもらう。
 続いてグレートスレーブ湖に向かう。冬季は凍っており隣町への道路となっている。本来ならばこの時期は大型車も通行できるが、今年は暖冬で氷が薄く5000kgまでの重量制限がかかっていた。バスは湖入口に止まり湖上を散策する。車が通ってできた轍以外は見渡す限りの真っ白の雪原が広がっている。ここが湖上ということはちょっと信じられない。夏季は遠回りせねばならず40分くらいかかるらしい。

グレートスレーブ湖のアイスロード。車体重量5000kgまでに制限されていた。

 観光バスはOld townへ向かう。イエローナイフは旧市街(Old town)と新市街(Downtown)に分かれている。Old townはイエローナイフの中でも最初に居住が始まったところで、古い建造物が残っている。

 ガイドさんはバスの中で地域の歴史を話す。 

 イエローナイフがあるノースウエスト準州は英語、フランス語の他に9つの先住民族の言語がある。Old townの標識はその先住民族の言語が併記されていた。

Old townで見かけた標識。先住民の言葉で「止まれ」を示す言葉が併記されている。

"Ragged ass street"という地名の通りに差し掛かる。直訳すると「ぼろぼろの肛門」である。地名にしては下品な名前である。カナダではそこそこ有名なようで、wiki記事も存在する。

en.wikipedia.org

 

 かつて、この通りに建物を多く所有していた人物が、バーで友人たちと冗談でつけた名前であるそうだ。日本にも「尻毛」のような珍地名があるが、特定の人物が自嘲的に命名した地名というのは皆無なのではなかろうか。

 Pilots monumentはOld townの中心にある小高い丘である。高い山がないこの地域で、この岩の隆起物は開拓時に飛行機パイロットの目印として大きな役割を果たした。頂上からは遠くまで見渡すことができる。
遠くに見える山脈からは金がとれたそうだが、今はもう採れない。イエローナイフは探鉱の町であったのだ。

 Pilots monumentを見終えてバスに乗り込む前に、バス運転手の方が野鳥を見つけて教えてくれた。シマエナガのような大きさの真っ白な鳥が2頭いた(鳥の名前は聞いたが忘れてしまった)。夏は灰色の羽、冬は白い羽で保護色になっているのだという。ツアー客は"Cute! Cute!"と言いながら写真を撮っていた。出会えることはかなり稀らしい。

わかりにくいが真ん中あたりに鳥がいる。

 次の目的地Prince of Wales Northern Heritage Centerに向かうバスの中で食事の話になった。 

 ガイドさん曰く、イエローナイフの食事は大したものではないという。バッファロー、ヘラジカ、うさぎなど食べることができるがうさぎはあまりおすすめしないと。美味しいのはバーガーやフィッシュアンドチップスだそうだ。

 Heritage Centerについた。地域の民族資料館のようなもので、先住民族の道具や昔の映画館の椅子、鉱石などが展示されていた。展示室は3部屋に分かれていたが、1つ目の自然に関する展示室をゆっくり見すぎていたせいで、残り5分であと2つの部屋を見なければならなかった。時間があればゆっくり見たいところだ。

 バスの窓からは、まだ16時頃にもかかわらず日暮れが見える。高緯度地方における冬の日照時間は短い。

 最後にイエローナイフ市内にある観光案内所へ。イエローナイフに来た証明書とピンバッジがもらえた。

 バスでホテルへ戻る。最後にガイドさんが「ありがとうございます」と挨拶してくれた。

 

 少しホテルでウダウダする。
 ホテル近くであるCoyote'sに夕食を食べに行く。ゲームバーの2階にある。入り口は金属製の重いゲートだった。雪国っぽい。16時半くらいに行ったので空いていた。
 ご当地ならではの料理が食べたいと思いバッファローステーキをオーダーしたが今はやってないとのこと。かわりにバッファローを使っているハンバーガーを注文。あとオレンジジュースも。
 バッファローはまんま牛肉であった。
 テレビではアイスホッケーの試合がやっていた。マリオカートの画面が移されたテレビとスイッチもあった。
 食べている間に来客が増えてくる。
 チップの払い方が分からず不安であったが、会計時に支払額の15%、18%、20%を選んでクレカで払えるようになっていた。ウェイターさんには英語がわからないのに良くしてもらったので18%とした。

 腹ごなしにイエローナイフの街の中を歩く。イエローナイフはフランクリンストリート(50thストリート)が一番のメインストリートである。イエローナイフには「金でストリートが舗装されている」というジョークがあったらしい。それほどイエローナイフは金鉱山の街として有名だったということだ。実際には鉱山で取れた石が建物の柱に使用されている(らしい)。

フランクリンストリートにあった説明標識

 

 20時50分にオーロラビレッジのバスが来て出発。この時点では星空が出ていたのでかなり期待が持てた。オーロラビレッジに着いてから、ガイドさんの目にはうっすらオーロラが見えていると言っていたが素人目には分からなかった。

 

 ガイドさんの口ぶりから、オーロラ予報なるものがあるらしくネットを調べると以下のアプリを見つけたのでダウンロードした。(オーロラを見に行かれる方は前もってインストールしておくのがオススメです。)

 

Android

play.google.com

 

iOS

My Aurora Forecast & Alerts

My Aurora Forecast & Alerts

  • JRustonApps B.V.
  • 天気
  • 無料

apps.apple.com


 アプリを見ると、オーロラを起こす磁気のエリアがまだ東南の方にあった。このまま待っていれば徐々にオーロラ発生エリアが西のほうに移動してくるはずだから待っていればよい。ところが、22時くらいから曇り始めてきてしまった。それでもオーロラは起きているはずだからと、地平線付近に光るものをオーロラだと思って撮影していたが、あとで車のヘッドライトだと知った。

 23時にオーロラビレッジ内でやっていた極寒体験ショーを見た。この時の気温はマイナス14℃。初めにTシャツを水に濡らしてハンガーにかけておく。次に濡らしたタオルを10回転振り回す。するとタオルはまっすぐな形のまま凍ってしまう。本当は-20℃以下だと、水から取り出してすぐに凍ってしまうからもっとインパクトがあるらしい。お湯を紙コップに入れて空中に放つと、水滴が一瞬で凍ってダイヤモンドダストのようになる。バナナも凍っていて釘が打ててしまう。ショーは20分ほどで終わり、最初に干したTシャツはカチカチになっていた。

 23時45分に延長チケットを25$で購入。終了時間を23:50から2:20に延長する。ここで延長しなければ後悔すると思った。しかし雲が晴れず12時以降もオーロラは一向に見えない。

 2時頃に雲が少なくなった。しかし磁気レベルが低くオーロラは現れない。オーロラビレッジに来るのは、この日で最終日なのでティーピーの前で撮影をしてもらった。その後、南の空に動く白いもやが現れるようになった。周りが「オーロラ」とざわつき始めた。皆、喜んでカメラを向けた。自分もやっと見れたと感激していた。しかし現像された写真を受け取っているときにオーロラビレッジのガイドの方から「あれはただの雲ですよ、オーロラであればもっと帯状に見えるはず」と言われた。ぬか喜びであった。人間は追い込まれると藁でも丸太に見えてしまうようである。訓戒として良い経験となった。集団心理は恐ろしい。
 結局オーロラは見られなかった…。

 ホテルに帰ってからも悔しくてなかなか寝付くことができなかった。

 

3日目(2023/1/20)


 10時くらいに起床。何も予定がないので、街中をぶらつく。
 昨日はDowntownの方に行ったので今日はOld townの方に向かう。フランクリンストリートをOld townに向かって北東に歩く。

イエローナイフ Old town鳥瞰図

 途中、お土産屋のGallery of the Midnight Sunに立ち寄る。キーホルダー、マグカップ、服2着を購入。10000円くらい。観光地価格なのかカナダの物価が高いのかはわからない。民芸彫刻なども並んでおり見ていても楽しめる。

Gallery of the Midnight Sunのマーク。初め兼六園の琴柱灯籠かと思った。


 凍結したグレートスレーブ湖の岸辺には船が置かれている。夏になるとここらへんの様相は全く違うものなのだろう。
 橋を渡っているときに、犬とソリを楽しんでいる姿を見た。犬は、黒くて大きくそばにいると威圧感を感じる。放し飼いのようになっているらしい。

 あと、カラスがでかい。後で調べたが、ワタリガラスという種類らしい。ハリーポッターに出てくる寮の名前「レイブンクロー」にもとになっている動物(Raven)だ。

イエローナイフ Old townでは犬をたくさん見かけた。

 

Wildcat Cafe、Bullocks Bistroの写真を撮り、ツアーで一度行ったPilots monumentに立ち寄る。昨日より青空がきれいだ。家々から立ち上る蒸気が異国の雪国に来たことを実感させる。

Pilots Monument頂上から周囲を望む

 

 道路には砂利が巻かれていて、それで車のスリップを避けているようだ。確かに、除雪や水をまいて融雪するのは氷点下の環境では不向きだろう。

 Downtownの方へ戻る。外出する前にシャワーを浴びたのだが歩き続けているうちに前髪が凍っていた。現地では誰もマスクをしていなかったので、マスクを外して歩いていたら鼻毛も凍った感覚がした。

この日の気温は-13℃。本当は-20~30℃まで下がっている時期なのでこれは暖かいほうである。風は強くないのであまり寒さは感じない。

 地元のショッピングセンター(YK Centre Mall)に立ち寄る。ここはカナダだが典型的なアメリカのスーパーという感じがする。果物が平積みで置かれていて、ケーキや牛乳は大きなサイズで売られている。日本食などは売っていない。パンパースのデザインだけは日本と同じであった。

ショッピングセンター近くにあった、どこか見覚えのある看板

 イエローナイフノースウエスト準州の州都であるが、人口は2万人ほどでしかない。日本でいうと軽井沢の人口と同じくらいである。それくらいの規模感の街が準州の中心地となっているのである。

 イエローナイフは冬を過ごすには過酷すぎる環境なので、夏はイエローナイフに住み、冬は南の都市に移動する、渡り鳥のような住民も数多くいるらしい(市内観光ツアーで聞いた)。なので夏における実際の人口は2万人よりも膨れ上がる。学生は夏と冬で別々の学校に通っていたりするのだろうか。

 イエローナイフの街はコンパクトで、大型ショッピングモールは街に1つしかない。映画館は3本の映画しか上映していない。映画館の前を通りかかったときはアバターの新作のポスターが貼ってあった。イエローナイフで働く日本人ガイドの方は現地の方に「イエローナイフに来て何して過ごしてるの?何もないよ!」みたいなことを必ず聞かれるらしい。

イエローナイフのバス時刻表。1時間に1本程度。

 夕食はホテル3階にあるレストランにした。Spicy Elk Stir Fry(ヘラジカ肉の辛味炒め物)とEgg Fried Rice(卵ピラフ)を注文。メニュー表の写真からは分からなかったのだが量がかなり多い。Spicy Elk Stir Fryは火鍋料理に近い薬膳の味がした(しかもけっこう辛い)。Egg Fried RIceは美味しかった。米が細長かったが対して気にならない。ウェイターのおばちゃんは中国返還前の香港出身だと別のお客さんと会話しているのが聞こえた。干支の話などもしていた。食べきれなかったので残りは持ち帰りさせてもらった。

Egg Fried RiceとSpicy Elk Stir Fry

 18時頃に風呂に入る。防寒着をまとめクロークそばに置いておく。明日の空港バスに間に合うために6時ころに目覚ましをかけ眠る。

 夜1時半頃に目が覚める。オーロラアプリでオーロラが見れそうだと知る。一縷の望みをかけて部屋の窓の近くに座って南西の空を眺める。すると縦に伸びる帯状の発光体が見えた。カメラだと緑色に映る。オーロラだ。見えないまま帰国になると思っていたがなんとか見ることができた。

ホテル部屋の窓から見えたオーロラ

 実物を見て分かったことだが、オーロラは肉眼で見るより写真に撮ったほうが緑色が出てきれいに見える。逆に言えば、「オーロラかな?」と思ったら、デジタルカメラで撮ってみて色がより強くついているかどうかでオーロラかどうか区別できる。色がついていなければただの雲である可能性が高い。

 オーロラビレッジで見ることができていれば、もっときれいに見えていただろうに。惜しかった。
 ホテルの外にでてみる。いくつかのかすかな緑色のオーロラを見ることができた。3時40分にホテル内に戻った。

 

オーロラが見えたときのアプリのスクリーンショット。見える確率は40%であった。

 

4日目(2023/1/21)

 朝6時、チェックアウトに向けて荷物を整理する、テイクアウトした料理も頑張って食べきった。
 7:50にオーロラビレッジのガイドの方が迎えに来て、空港行きのバスに乗る。日の出時刻は9時頃で、外はまだ真っ暗だった。 

 イエローナイフ空港は、地方空港なせいか、のんびりしている。最初は1~2人でチェックイン受付をしていたが、それでは予定時刻までに行列がはけ切らないとわかるとチェックイン受付の人数を増やした。それでも当初の出発予定時刻より30分くらい遅れたと思う。

 10時頃イエローナイフ空港発。隣の女性は"Memory and Democracy"と書かれた難しそうなプリント済論文を添削していた。大学生か大学教員なのかもしれない。

 時間を1時間戻して12時頃にバンクーバー空港着。液晶ディスプレイで乗り換え便のゲートと時刻を確認。55番ゲートはかなり端っこのほうにあった。途中で、行きには立ち寄れなかったエリアに行けたので良かった。

バンクーバー空港の名物であるミニ水族館

 搭乗前には、コロナウィルス接種証明書を空港係員に見せてチケットにサインをもらった。

 予定より30分ほど遅れて13時半ごろバンクーバー空港発。座席は隣が空いており、座る姿勢の自由度といった点で行きの便より楽であった。食事は行きと同じで2回あった。メニューは行きの便で選んだものとは反対を選んだ。食事にはわんこそばくらいの量のそばもあり、自分は軽いそばアレルギーなのだが「食事を残すのはポリシーに反する」という思いで完食したら、腕に蕁麻疹が出た。2回分の食事とは別に、サンドイッチ2切れとビスケットの配布もあった。機内では本を読んだり"フォレスト・ガンプ"を観たりした。恥ずかしながらトム・ハンクスという人物について、名前だけ知っていて顔を知らなかった。

 日付変更線をまたいで1月22日の日本時間17時頃、成田空港に到着。国際線乗り換えの人が先に降りる。この時点で半数以上の人が降りた。残りは日本に帰国するか日本に入国する人である。

 到着口からは誘導レーンがあり、こんなに人必要か?と思うくらい空港係員が定期的に立って黄色いチラシを配り案内をしていた。

 ここではじめて知ったのだが、日本へ入国する際はVisit Japan Webで手続きをしておくとQRコード表示が使えて手続きが簡便になるっぽい。

 

vjw-lp.digital.go.jp

 

 完全に準備不足だったので、Visit Japan Webの会員登録だけ自分で行って、コロナウィルスワクチン3回目接種証明書を見せて通してもらった。荷物を受け取り、税関に紙を出して日本へと戻る。

 18:30発のエアポートバスの乗車券を買い、東京駅へ向かい、帰宅した。

東京駅

 以上、イエローナイフ5日間の旅であった。オーロラを見るという目的は完全な形ではないにしろ達成できたのではまあよかったのではないかと思う。